コールセンター/コンタクトセンターナレッジ
IT活用でコールセンター/コンタクトセンターの課題を解決 -基礎編-
TOPICS -目次-
コールセンター/コンタクトセンターの役割とは >>
コールセンター/コンタクトセンターのシステムについて >>
コールセンター/コンタクトセンターの自動化についてと今後の行方 >>
コールセンター/コンタクトセンターの役割とは
コールセンターとコンタクトセンターの違いとは?
以前は、電話での問い合わせ対応を行う「コールセンター」が主流でしたが、今や電話は数あるコンタクトチャネルのひとつに過ぎません。「コールセンター」とは文字通り、電話対応を専門に行う部門の名称ですが、近年、企業は電話やメール、FAXといった昔ながらのチャネルに加え、SMSやオンラインチャット、LINEをはじめとするSNSなど、新しいコンタクトチャネルへの対応も求められます。このような業務を行う部門を「コンタクトセンター」と呼びます。
「カスタマーサポート」 「ヘルプデスク」 「お客様相談室」なども、ほぼ同様の業務を行う部門の名称です。このような部門は、消費者との最初の接点を持つことが多いため、「企業の顔」として応対品質を維持し、かつ顧客満足度の向上を目指す必要があります。
しかしながら、労働人口の減少による人材確保の難しさ、またコンタクトチャネルの多様化のため、応対品質を維持し、顧客満足度を向上させつつ、業務をいかに効率化して、コンタクトセンターの負担を軽減できるかという課題解決は簡単ではありません。
コールセンターの問い合わせ削減
スマートフォンの普及により、消費者は、いつでも/どこからでも、気軽に情報にアクセス出来るようになりました。前述した「顧客満足度向上」と「業務効率化」を両立させるため、企業はウェブ上での情報発信を工夫し、極力、コールセンターへの問い合わせを削減する取り組みを進めることが必要です。
その一つの解として「自己解決可能な手段」を提供することにより、不要なコールの削減を目指す方法があります。
コール削減には、大きく分けると
1. 消費者自身が問い合わせる疑問・質問をなくす(そもそもユーザーに疑問を持たせず、コール自体を発生させない)
2. 消費者自身で解決できる仕組みを提供する(ユーザーが疑問を持つものの有人対応に至らせない)
という2つの方法があります。
1.については、製品やサービス自体に加え、マニュアルや規約・規程等を改善・改編すること。
2.についてはウェブFAQの充実、消費者同士が情報交換するコミュニティサイトの運営などが考えられます。コンタクトセンター外での工夫も必要不可欠、ということです。
しかし、たとえウェブで該当する解決策を見つけることが出来たとしても、消費者が求める答えとは異なるケース、根本的な解決に繋がらないケースもあります。
消費者の自己解決率促進
ある統計では、問い合わせを行わず、消費者自身で自己解決できた人は2人に1人、しかも、解決できた人の2人に1人は、解決するまでに10分以上を費やしているとのデータが出ています。自己解決できない場合はコールセンターやウェブチャットなどでオペレータへ連絡しますが、この時点で解決できなかったことに不満を持っており、その不満をオペレータへぶつける傾向にあります。
またウェブの情報が曖昧な場合、同じ質問をして確認(答え合わせ)をする人もいます。
つまり、FAQを始めとするウェブ上の情報を整備することは非常に重要であり、陳腐化//情報一貫性の欠如はコンタクトセンターの生産性を低下させます。
最近はあまりないようですが、チャットボットが登場した当初は、それを安易に導入したことで、FAQコンテンツの陳腐化//情報一貫性の欠如が顕在化され、逆に問い合わせが増えた、というケースも少なくありませんでした。それだけFAQコンテンツの運用は重要であり、コンタクトセンターの運営に影響があることがわかります。
一方、コンタクトセンターに問い合わせがあった内容は、センター外での施策、営業やマーケティング、商品・サービスの開発などに活かせる、貴重な情報ソースとなりえます。したがって、どういった「顧客の声(VOC)」を蓄積して活用するのかを意識して取り組む必要があります。
そうした場合、コールセンターでのCRMをはじめとしたシステムの活用方法もスマートなコンタクトセンター運営の重要な鍵になりえます。次の章では、コールセンター/コンタクトセンターのシステムについて考察します。
コールセンター/コンタクトセンターのシステムについて
顧客接点が「電話」しかなかった時代では「PBX(Private Branch eXchange)」「CMS(Call Management System)」「CTS(Call Tracking System)」がコールセンターシステムの"三種の神器"でした。CTSは現在、CRM(Customer Relationship Management)システムとも呼ばれ、顧客とのコンタクト履歴を管理するツールと位置付けられています。
様々なチャネルが誕生し、顧客からのコンタクト手段も多様化した昨今では、必要なシステムも変化しつつあります。
ここで、コンタクトセンターのシステムとして、必要な機能や考え方について整理してみましょう。
マルチチャネル対応機能
顧客からの問い合わせは今や電話だけでなく、メールやSMS、Webフォーム、チャット、SNSなど様々なチャネルから発生しています。
チャネル毎に様々なツールを別々に用いて履歴を管理しても、業務が煩雑になりますし、顧客目線における時系列での履歴を把握できず、大切な要望や重要な転換期を見落としてしまうことにもなりかねません。これらはITの力を利用しないと統合できませんし、統合化することでCX向上にも役立てる事ができます。
データ分析機能
履歴データを集計し、分析することで様々な情報を把握することが可能になります。顧客の声(VOC)の収集や製品/サービスの改善につながるヒントだけでなく、センター運営上の課題や対応方針も見出すことができます。
また、問い合わせ量とコールリーズンとの関係から、最近の問い合わせ傾向やペインポイントを見つけ出すこともできます。これらは分析ツールを使いこなすことで効率的に行うことができます。
コールセンター運営管理機能
問い合わせに必要な情報整備や、スーパーバイザーがセンター運営するために必要な機能群を指します。例えば問い合わせ対応に必要なFAQやナレッジ情報は他の情報と正しく連携し、誰が答えても同じであり、その内容はできるだけ素早く(場合によっては能動的に)検索できる必要があります。
またセンターを運営していく上で次々に発生する事象(有事、ハードクレーム、NGワード検知など)をスーパーバイザーは常に把握する必要があります。それを解決するための機能として、エスカレーション機能、感情分析、一斉通知機能などがその一例として挙げられます。これはフロアやセンターが分散されていたとしても関係者には正しくタイムリーに連携される必要があります。
クラウドプラットフォームの利用
これはSaaS利用という観点だけでなく、アマゾンウェブサービス(AWS)やMicrosoft Azureを利用したクラウドコンピューティングマネジメントサービスも含みます。つまりデータセンター上にシステムを構築し、それを運用保守する事が(要員的にもスキル的にも)難しい状況にある中では、様々なクラウド基盤を利用しない手はありません。元来、企業の情報システム部門は多忙を極めています。パッケージ/サービス問わず、その運用から情報システム部門が解放される事で、本来のITを利用した事業運営をどう進めるかに時間を使う事ができます。
クラウドプラットフォームを利用することで、上記で記載した分析ツールもサービスとして多数存在しているので、大規模な投資をしてシステム構築をせずとも自分達に合うツールが何かを、試しながら選定することができます。
自動化ツール
自動音声応答(IVR)など、以前より存在する自動応対の仕組みはもちろんですが、近年AI技術を利用した、よりきめ細かな対応を実現することが可能になっています。音声認識や音声合成、インテリジェントルーティングなどの技術を組み合わせ、より精度の高いチャットボットやバーチャルオペレータが対応することで、単なる自動化ではなく、顧客体験させる様々な施策展開をある程度、自動化する事ができます。
顧客ニーズや働き方の変化、そしてAIの台頭でシステムに求められる機能は大きく様変わりしました。しかし、顧客からの問い合わせに対して早く正しく対応する(場合によってはそれ以上の価値を提供する)ことが目的であることは昔も今も変わりはありません。そういった意味では、今後も全てがシステムで自動化されることはないように思われます。
次の章では、その自動化の行方について考察したいと思います。
コールセンター/コンタクトセンターの自動化についてと今後の行方
生成AIの活用により進むコンタクトセンターの自動化
コンタクトセンターもノンボイスの定着やAIの台頭により、対応の自動化が進んでいます。ChatGPTを始めとする生成AIを活用し始めたセンターも登場し始めました。
2023年前半時点では、生成AIは完全な回答を得られないため、FAQ候補の作成、研修用データの作成、テスト結果のフィードバックなど利用方法は限定されますが、特にスーパーバイザーに関していえば、明らかに工数削減に貢献しています。今後も回答精度やデータのパーソナライズ化が進むことで、より自動化の流れは進むでしょう。
また自動化が進むことで問い合わせに対する回答スピードがあがる、リピートオーダーが自動で完結するなど利用者/提供側双方に利点が生まれます。セキュリティおよび自動化を悪用するケースに注意する必要はありますが、これまで単純な業務に絞られた活用の仕方から、ハルシネーションのリスクを回避しつつ、少しずつ複雑な問い合わせ対応もできるようになるでしょう。
コンタクトセンターにおける生成AI活用の現状
しかし、実際に導入効果を最適化、最大化するには、以下のようにいくつかの課題が存在しています。
- 生成AIが作成する回答は完全でないがゆえに、顧客フロントとしては安全に利用できない
- 電話対応においては、音声認識と要約処理を必要とするため、リアルタイム性・投資規模の観点から導入が困難
- AIの活用によって現行の運営規模の縮小のリスクがあるため、センター運営をアウトソースしている場合、なかなか現場からの積極的な移行提案が出にくい など。
有人対応はなくならない
また、利用者からするとオペレータと会話したい場面は少なからず発生しつづけます。自動化が進むのに対し、イレギュラーな事態に関する対応策がない、もしくは見つけられなければ利用者は直接話をしたくなります。
その時、大半の利用者はシステムの対応に不満を抱えたまま話を開始します。
自動化の範囲および設計が上手くいっていない場合、その割合は増えますし、その結果として、有人対応が増える可能性があります。少し前にWebサイトのFAQの内容をそのままチャットボット化したことで「使えない」ボットを生み出し、かえって有人対応の問い合わせが増えたという事例が多くありました。
そして有人対応を開始する時点で、利用者が不満を持ったまま会話が始まることで、対応時間が延びオペレータのストレスも増加してしまうという結果を招きかねません。
そういったリスクを踏まえながら、AIによる自動化と人による対応をより良く組み合わせていくことが必要になります。
つまりChatGPT等の生成AI技術と、コンタクトセンター領域の専門スキルやノウハウを有した人材やサービスの確保がより重要となると言えるでしょう。
AIと人的対応の組み合わせで創出可能な効果例
- 適切な回答を生成するための仕組み化によるAI活用レベルの最大化
- AIの回答を人によって補正することによる正確性・コンプライアンス・サービスレベルの確保
- 補正履歴をもとに、AIの回答生成精度を継続的に向上 など
AI技術を活用しつつ、運営しながら業務改善することが重要
「量と質の両立」はコンタクトセンターの長年の課題です。その解決策の1つが無人化、自動化である事は疑いのない事実です。ただその使い方を間違えると「質」も「量」も改善されないことになります。
範囲や設計の必要性は前述しましたが、それでも運営を開始すると想定外な問い合わせが発生します。そうした問い合わせ対応を改善するには、コールリーズンを把握し適切なチャネルはスキルのあるオペレータへ誘導する、まさに今までと同じセンター運営に関する施策検討が必要になってくるのです。課題を洗いだし、PDCAサイクルを回し続けることが健全なコンタクトセンター運営の成功の鍵と言えるでしょう。
【おススメサービス紹介】⽣成AI×コンタクトセンターサービス(AI-BPO)
コンタクトセンター業界でも、生成AI技術に対する注目が高まっています。しかしながら、生成AIの最大の弱点である回答の精度(誤った回答を行うリスク)から、オペレータの業務支援的な活用が主流であり、顧客フロントとしての活用がさほど進んでいないのが現状です。この現状を打破し、本格的な顧客フロントとしての活用に向けては、回答精度の担保が重要であり、そのためには生成AI側に適切な指示(プロンプト)を提供することが求められます。この課題に対し、バーチャレクスは生成AI活用の活用基盤システムを有するKotozna社と提携し、適切なプロンプトを生み出すシステム×運用の提供を開始しました。
【事例紹介】CRMの刷新によりコンタクトセンターの応対品質向上、業務標準化を推進
コンタクトセンターは今や企業の「顔」であり、さまざまな問い合わせに対して精緻な回答を提供できる体制は、顧客満足度や信用力の向上につながります。一般的にコンタクトセンターの構築には、顧客情報を蓄積・整理・分析するCRMが用いられており、CRMが持つ機能がコンタクトセンターの業務品質を左右することも珍しくありません。その一例として、住宅関連機器大手の株式会社LIXIL様の事例を紹介します。